血液検査は頻繁にしなければいけないのでしょうか?
血液検査にはいくつかの目的があります。主な目的は「診断」「活動性の評価」「副作用・合併症のチェック」です。診断の時は当然必要ですが、治療を開始した後も、「活動性の評価」と「副作用・合併症のチェック」目的で採血が必要です。採血のタイミングは状況によって変わります。治療を開始した直後や治療薬を変更したときは2週間〜1か月おきに必要です。リウマチが安定して、コントロールされている状況だと3か月から6か月に1回程度でもよい場合があります。患者さんによりチェックすべき項目と血液検査の頻度は異なります。
関節リウマチの新しい注射の薬とは、どんな薬ですか?
2003年以降、わが国では「生物学的製剤」という注射の薬が使用できるようになりました。生物学的製剤はたくさんの患者様に使用されており、これまでの内服のリウマチ薬にくらべて、目覚ましい効果を上げています。有効性が高く、骨の変形や破壊を抑制します。早期から使用すると一部の患者様では、関節リウマチの「寛解」や「治癒」が期待できます。海外の報告では生命予後を改善させる(寿命を延ばす)可能性が指摘されています。免疫抑制の作用のため、結核や肺炎などに注意が必要であること、保険適応ですが高額であること、完全に効果が保証されているわけではなく部分的にしか効かないこともある、などの注意点があります。また、患者様によっては生物学的製剤を使用できない場合もあります。詳しくは「生物学的製剤」のページもご覧ください。
「標準治療」って何ですか?もっといい治療はありますか?
「標準治療」とは日本リウマチ学会や欧米のリウマチ学会が定めている標準的な治療方法のことであり、「ガイドライン」や「リコメンデーション」などとも言い換えることができます。標準治療は科学的根拠「エビデンス」がしっかりとしており、効果が確認されている治療法が記載されています。逆に、民間療法や経験的医療で科学的根拠のはっきりしない治療法は載せられていません。日本語で「標準治療」というと、なんだか弱くて効かなそう、というイメージをお持ちになる方もいらっしゃいます。確かに語感ではそういう印象もありますが、標準治療というのは科学的な根拠のしっかりとした、最も効果が期待できる治療、という意味です。標準治療よりも上級の治療はありません。「標準治療」がもっとも優れた治療法です。例えば、関節リウマチの最も基本的な薬剤で、かつ標準的な治療に位置づけられているものはMTX(メソトレキセート)です。関節リウマチの診療の基本はこういった標準治療薬をきちんと使う事です。
関節リウマチの変形は治らないのでしょうか?
関節リウマチの活動性が高い状態のままでいますと、やがて関節が変形してしまいます。残念ながら、一度変形してしまうと、なかなか自然に治ることはありません。生物学的製剤の使用により破壊された関節がある程度修復されることがありますが、関節変形の回復は難しいです。最近の研究で、関節リウマチは最初の2.3年で病気が進行し、関節変形が出てくることが分かってきています。できるだけ早く診断し、適切な治療を開始して、病気をコントロールすることが大事です。変形が完成してしまった場合は、装具を作成することもありますし、手術治療の選択をする場合もあります。変形している関節の部位や関節リウマチの病状により、治療方法や改善の程度は異なりますので、医師にご相談下さい。
手術で関節変形は治るのでしょうか?
関節変形による痛みや使いづらさがある場合、手術治療でその変形を治し、使いにくさや痛みを改善できる可能性があります。手指の変形は、関節が変形している場合と、腱が切れて変形している場合(腱断裂)があります。それぞれに対して、適切な手術治療がありますので、内科的な薬を使った治療で限界がある場合は適切なタイミングで整形外科に紹介いたします。変形している関節の部位や関節リウマチの病状により治療方法や改善の程度が異なりますので、医師にご相談下さい。
関節リウマチにリハビリテーションはなぜ大切なのでしょうか?
関節リウマチが進行しますと、日常生活のさまざまな動作が難しくなっていきます。薬による治療や手術によって、関節の腫れ、痛み、変形についてかなりの割合で改善させることができるようになりました。しかし、しばらく関節を使わずにいると、周りの筋力が衰えて、関節可動域が狭まり、固くて動きの悪い関節になってしまいます。どんなに素晴らしい薬剤を使っても、どんなに素晴らしい手術を受けていただいても、しばらく使わなかった関節は、すぐには使えるようになりません。衰えた筋力を回復させ、関節の可動域を広げるため、リハビリテーションを行う事は非常に重要です。リハビリテーションには、痛みや苦痛が伴うことがあり、継続して行うことは時に困難であり、投げ出したくなることもあるかもしれません。衰えた筋力は何歳になっても、適切なトレーニングと栄養状態で、程度の差はあっても、回復できることがわかっています。毎日少しずつ、地道に続けることが大事です。リハビリというと、ジムにあるような大きなトレーニングルームを想像される方もいらっしゃいますが、それだけではなく、毎日の生活動作にもリハビリにつながるものがあります。自分に合ったトレーニング法を工夫してみましょう。必要に応じて整形外科やリハビリ科の先生と連携してリハビリを行うことも可能ですので、不安があればいつでも相談してください。
膝に水がたまりやすく、水をよく抜いてもらっている。こんなに抜いて問題ないか?
関節リウマチのコントロールが悪かったり、膝の変形性関節症があったりしますと、膝に水がたまることがあります。水(関節液)を抜くことは繰り返しても問題はありません。ただし、何度も何度も抜くということであれば、原因を考えたほうが良さそうです。もしも関節リウマチのコントロールが悪いのでしたら、治療の強化を考えるべきです。変形が強いことが問題であれば、場合によっては、整形外科で手術を検討することもあるかもしれません。膝は体重のかかる関節であり、体重を少し減らすだけで、コントロールがよくなることもあります。
生物製剤でがんになりますか?
生物製剤の副作用はいくつか確定しているものがいくつかあります。多くは免疫抑制効果に伴う、感染症の誘発です。癌の発症率を高める可能性は当初懸念がありましたが、最初の生物製剤が登場して15年以上が経過し、様々な市販後安全性調査が行われ、現時点で、明らかな発がん性は指摘されていません。悪性リンパ腫という血液の癌があります。生物製剤はこのリンパ腫の発症率を高める懸念もありましたが、同時使用のメトトレキサートの影響の可能性や、そもそも関節リウマチ患者に悪性リンパ腫の発生率が高い、という指摘もあり、現時点で、生物製剤が悪性リンパ腫を誘発するという確かな証拠はありません。最近の1万名を対象とした調査でも、抗TNFα薬を投薬された患者さんにおける悪性腫瘍の発症率は1.32、リンパ腫の発症率は0.24であった(発症率はいずれも100人/年あたり)のに対して、抗TNFα薬の投与を受けなかった患者さんでは、悪性腫瘍発症率が1.75、リンパ腫の発症率が0.33となっており、むしろ治療をした方が低い傾向が示されています。これまでのところ、生物学的製剤と癌の直接的な因果関係は立証されておらず、それほど心配をしなくてもいいのではないかと考えられます。 がんが既にある患者様、現在、がん治療を行っている患者様をどうするかについて、まだ定まった見解はありません。がんの重症度や進行度、関節リウマチの程度を総合的に判断し、適切な治療法を検討するべきだと思います。
治療で血液検査の炎症値(CRP、血沈)は正常になったが、まだ関節が痛い。
関節リウマチの治療によっては血液検査が早期に正常化したものの、関節炎がしっかりと抑えられていない場合があります。IL-6阻害治療を行った場合に、こういった状態になることがあります。関節炎が抑えられていないので病気自体は進行します。このような状態を避けるためには「関節エコー」や「MRI」といった検査が有効です。もしも関節炎が残っていれば、このような画像検査で炎症の所見が認められます。もしも何もなければ「痛み」の原因を他に考える必要があります。変形性関節症の場合、軟骨が減ってしまっているので、動作時に痛みが出ることがあります。変形性関節症の場合、リウマチの治療をいくら強化しても、あまり有効ではない可能性が高くなります。こうした場合、鎮痛薬を強化したほうがいい場合もあります。「痛み」はなかなか捉えることが難しい要素ですが、血液検査だけではなく、画像検査を組み合わせて、原因を分析し、痛みが取れるようにお手伝いさせていただきます。
MTX(メソトレキセート)で白血球が減少しますか?
MTXには骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板などの血液の重要な成分が減ってしまうこと)の副作用が報告されています。白血球が減ると、感冒や肺炎などの感染症を起こしやすくなります。白血球数が極端に減ると感染症に対抗できず、生命の危険があるため、入院が必要になるケースもあります。こうした副作用をモニタリングするため、MTXを服用している患者様は定期的な血液検査が必要になります。骨髄抑制はなかなか症状に直結しないため、かなり悪化してから発見されることもあります。高齢の方で脱水状態から腎障害が起きた場合、MTXが濃縮された状態となり、急に副作用がでてくることもあります。MTXを服用している場合、日ごろから脱水にならないように注意をしてください。体調不良の場合、MTXを休んだほうがいい場合もあります。判断に悩む場合は医師にご相談ください。また、葉酸(フォリアミン®)の補充は副作用の発生率を下げますので、決められた用法用量でしっかりと服用して下さい。